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浦和地方裁判所 昭和43年(ワ)450号 判決

主文

原告は埼玉県川口市大字芝字綱の輪壱弐七五番地壱、宅地五参六、弐参m2(壱六弐坪弐合壱勺)の内宅地四壱五、五四m2(壱弐五坪七合)(別紙図面ABCIHGFDEAの各点を順次直線で結んで囲繞された部分)につき被告に対し地上権を有することを確認する。

前項の地代を一ケ月金九五六円三三銭と定める。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

一、原告は、「主文第一、二、三項と同旨の判決」を求め、

(一)  請求原因として

1  訴外鈴木蓉子(以下鈴木という)は、昭和三六年一月から別紙物件目録(一)記載の土地(以下本件土地という)、並びにその地上にある別紙物件目録(二)記載の建物(以下本件建物という)を所有していたところ、鈴木は訴外岩佐テルエ(以下岩佐という)から金三九万円を消費貸借にて借受け、右債務の担保として昭和三六年一二月九日右岩佐との間に本件建物につき抵当権設定契約(以下本件抵当権設定契約という)をなしたが、鈴木は右債務を弁済しなかつたので債権者岩佐は抵当権実行の申立をなし、本件建物は競売に付されるところとなり、昭和四一年一一月二日原告がこれを競落しその所有権を取得するとともに本件土地につき法定地上権を取得した。

2  被告は、鈴木の債権者訴外センター電機商会の申立により、強制競売に付された本件土地の所有権を昭和四三年三月一三日競落により取得したが、原告の地上権を承認せず地代の協定にも応じない。

3  よつて原告は本件土地に対して地上権を有することの確認並びに地代の確定を求める。

と述べ、

(二)  さらに原告は本件土地については、「地代家賃統制令」が適用され、本件地上権地代については、同令所定の額をもつて相当とする。

と述べ、

(三)  被告の抗弁に対する答弁として

本件建物の保存登記は、被告主張のような地番の不一致が存するとの事実は認めるが、その余の事実は否認する。

と述べた。

(四)  (立証)(省略)

二、被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、

(一)  請求原因に対する答弁として

1  請求原因1の事実中、本件建物について訴外岩佐が抵当権を有し、岩佐の申立によりそれが競売に付され昭和四一年一一月二日原告がこれを競落し、その所有権を取得したとの事実は認める。本件低当権設定当時本件土地、建物とともに鈴木の所有に属していたとの事実は知らない、その余の事実は否認する。

2  請求原因2の事実中、本件土地の所有権を被告が昭和四三年三月一三日競落により取得したとの事実は認める、その余の事実は否認する。

3  請求原因3の事実は否認する。

と述べ、

(二)  さらに被告は、右の答弁に関して、

1  本件抵当権設定以前に本件土地の前所有者たる訴外矢作忠三郎と訴外浅賀愛康との間に、本件土地につき売買予約契約が締結され、その所有権移転請求権につき仮登記もなされている。したがつて本件土地は、抵当権設定当時鈴木の所有に属していたものとはいえず「抵当権設定当時土地建物とも同一人に属していなければならない」とする法定地上権発生の要件を欠き、原告は地上権を取得しない。

2  本件抵当権設定以前、本件土地に対して訴外株式会社センター電機商会により仮差押がなされその仮登記も経由している。かかる場合、仮差押債権者を保護し原告は右仮差押の本案判決による強制競売において本件土地を取得したる被告に対して地上権を取得するものではない。

3  たとえ、本件土地につき原告の法定地上権が成立したとしても、その範囲は、本件建物を使用するにつき必要な限度に限られるべく、

(1) 本件土地中、一一五、二七m2については、現在の本件建物居住者は、これを放置し、全然使用していないし、

(2) さらに、一〇〇、八二m2は、附近住民の共用私道であり、

本件土地の内、右二つの部分については、本件建物の使用につき必要なものとはいえず、法定地上権は発生しない。

4  さらに「地代家賃統制令」が適用され、同令第五条に基く「地代家賃統制令による地代並びに家賃の停止統制額又は認可統制額に代るべき額等を定める告示」(以下「統制額に代るべき額を定める告示」という)が適用されるためには、すでに地代につき停止又は認可統制額により統制されていることが必要であり、本件土地には過去地代に関する契約がなされた事実なく、従つて右統制額の制限をうけた事実もないので、地代につき、右同令並びに右告示の適用をうける余地はない。と述べ、

(三)  抗弁として、

本件建物は、実際には川口市大字芝字綱の輪一二七五番に所在するものであるにかかわらず、その登記簿(表題部)上、川口市大字芝字綱の輪一二七六番に所在するものとして保存登記がなされている。一定の建物につき抵当権が存するや否やは、その敷地につき所有権等を取得せんとするものにとつて将来法定地上権の制限を忍受しなければならないか否かにかかわることであり、従つて建物の低当権設定登記は抵当権の存することはもちろん抵当権の目的建物が、当該、その土地上に存する事実をも公示するに足るべきものでなければならず、本件建物の保存登記従つて低当権設定登記にも、前述のような地番表示の不一致が存する以上、その登記は法定地上権の対抗を受くべきものに対する公示としては要件を欠き、原告は、本件土地に対する地上権取得をもつて被告に対抗し得ない。

と述べた。

(四)  立証(省略)

物件目録

(一) 川口市大字芝字綱の輪壱弐七五番壱

宅地  五参六、弐参m2(壱六弐坪弐合壱勺)の内

宅地  四壱七、弐参m2

現況  四壱五、五四m2

(別紙図面省略)

(二) 川口市大字芝字綱の輪壱弐七五番地壱

家屋番号 壱弐七五番壱の参

木造セメント葺平家建居宅一棟

床面積七六、八五m2(弐参坪弐合八勺)

(更正登記前の表示)

川口市大字芝字綱の輪壱弐七六番地

家屋番号 七〇壱番参壱

木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅一棟

床面積七六、八二m2(弐参坪弐合四勺)

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